1. 掟と特徴
「肥前刀は難しい」―これは愛好家の間でよく交わされる言葉である。だが、難しいのは肥前刀だけでなく、どこの刀も難しいはずで、むしろ肥前刀は他国よそに比べて数が多いという点では研究がやり易く、鑑定学を修め…
「肥前刀は難しい」―これは愛好家の間でよく交わされる言葉である。だが、難しいのは肥前刀だけでなく、どこの刀も難しいはずで、むしろ肥前刀は他国よそに比べて数が多いという点では研究がやり易く、鑑定学を修め…
肥前刀の茎仕立てには、他国の流派には決して類例を見ることのない特殊な約束事があるが、この点を、十分な調査に基づき、的確に捉えて案内した書物はこれまで一書もない。 肥前刀の銘の位置が新刀期の他派と違って…
本文で述べた通り、茎仕立ての約束事は肥前刀鑑定学の基本中の基本。先ず最初にこの「掟と特徴」を修得しておかないと、肥前刀を鑑るに際して的確な判断を誤ることもある。以下の図版で分かる通り、刀の茎棟には必ず…
肥前刀の茎棟のことを筆者が『刀剣美術』で述べたのは平成七年(一九九五、第四六四号)であるが、それ以前に、茎棟の仕立て方に肥前刀の大切な「掟と特徴」が示されていることを識っていた愛刀家は少なかったと思う…