2.8 茎棟の掟8

肥前刀の茎棟について、これまでに述べられていた古説を要約すると、「肉が付いた物もあれば、角の物もある」ということになってしまう。確かにその通りではあるが、この内容を素直に解釈すると、「肉が付いていようが、角であろうが、別に気にしなくてもよい」ことになる。だが、これでは困るのである。刀剣書の教えとしては少なからず無責任で危険な表現であり、識らなかったが故の欠如とはいえ、遺憾である。

肥前刀中には菊池槍を模した物を時々見かける。下の四口がその例であるが、これ等は薙刀と同様、いわゆる指し裏に銘を切ることを通例としている。従って、茎棟も刀と同じ仕立てとなり、その多くが丸棟となる。

○菊池槍

29 銘 肥前国忠吉 慶長六年八月吉日 初代(一六〇一)
30 銘 肥前国忠吉 初代 慶長十年頃(一六〇五)
31 銘 肥前住播磨大掾藤原忠国 初代 寛文末頃(一六六九~七一)
32 銘 藤馬尉行広 五代 文化六年紀(一八〇九)を有す 

  •  肥前刀備忘録のご紹介
  • 忠吉系肥前刀の本質を追求し、従来からの肥前刀の定説を大きく書きかえる画期的な論証を、豊富な図版とともに展開します。より分かり易く体系化した論考は、初心の愛刀家から研究者に至るまで、肥前刀研究の決定版です。
  •  A4判・上製本貼函入・560ページ