4.2 二尺を超す大脇差2

二尺以上を刀と呼び、二尺以下を脇指とした分類法は、いつ頃から採用されているかは知らないが、必ずしも本筋の刀剣鑑定学に通っているとは言えない。

肥前刀では、刀の茎棟に肉を付け、脇指以下の短い物は角にするのが掟である。同時に刀を太刀銘とし、脇指以下は刀銘にするのが原則である。この二つの「掟と特徴」は常に共同歩調をとって行動する。

故に、図15の三口も脇指と鑑なければならないが、平成九年(一九九七)に、60の土佐守忠吉に出された某団体の証書に記載の類別は「刀」となっている(図14)。 正しい肥前刀鑑定学のもと、理屈に合った分類を心掛けてもらいたい。

59 脇指 二代忠広 万治頃(一六五八~六一) 刃長二尺一寸(63.6cm) 刀銘 茎棟角
60 脇指 土佐守忠吉 寛永初め頃(一六二五~二八) 刃長二尺七分(62.7cm) 刀銘 茎棟角
61 脇指 遠江守兼広 享保八年紀(一七二三) 刃長二尺九分(63.35cm) 刀銘 茎棟角
(61 佐賀県立博物館蔵)

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