4.4 長脇差注文書 – 正広家伝来の古文書より

下の古文書は正広家に伝来したもので、藩からの注文状であるが、注目すべきはその寸法である。二尺一寸七分(65.75cm)の長さを指示し、脇指であることを断って注文されている。これによって、二尺(60.6cm)を 越える長寸の脇指が注文されていた事実を識ることが出来る。裏を返せば、二尺で線を引いて刀と脇指に分類してはいけないことをこの古文書は教えている。武器である刀は、帯びる人の事情によって寸法が異なるのは当然であり、今日行われている一定の数字を基準とした単純な分類法は一考を要する。

世間では難しいと言われている肥前刀ではあるが、茎仕立てに明確な区別を示していたことによって、忠吉系 (肥前刀)は逆に分かり易い一派と言える。
(佐賀県立図書館管理)

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  •  A4判・上製本貼函入・560ページ