7.2 茎棟が教える偽物の数々 2

73 初代正広の受領前の銘をせたものであるが、この程度の銘を切っても世間では全然通用しない。つまり、肥前刀の長い物で茎棟が角であれば、銘の真偽を問う必要もない、と述べたのは、本物に紛れるほど上手な偽銘は少ない、という意味でもある。(刀 太刀銘 茎棟角)

74 二代正広の偽銘であるが、73の初代偽銘よりは上手。鏨癖は一応掴んではいるが、手の違いから来る文字面の違いを隠すままでには至っていない。この偽銘師が肥前刀の掟を識らなかった点が二つある。茎棟を角にしていることと、目釘孔が区から遠すぎることの二点。近世の偽銘と思われ、茎の錆状態はよくない。区から目釘孔までの距離については後で述べる。(刀太刀銘 茎棟角)

  •  肥前刀備忘録のご紹介
  • 忠吉系肥前刀の本質を追求し、従来からの肥前刀の定説を大きく書きかえる画期的な論証を、豊富な図版とともに展開します。より分かり易く体系化した論考は、初心の愛刀家から研究者に至るまで、肥前刀研究の決定版です。
  •  A4判・上製本貼函入・560ページ