忠国も掟に反して脇指以下の短い物でも茎棟に肉が付いている。今日、忠国は四代まで確認されているが、三代だけがどうやら掟を守っていたと思われる(図、上段)。
下段の図版は初代忠国だけの変遷を示したものである。最初期の広則時代は肉を付けていたようである。 忠国に改めてのち、播磨大掾時代の作は角の茎棟しか遺されていないが、晩年、播磨守へ転任後は、再び肉を付けた茎棟へ仕立てを戻している。初代忠国に関しては特異な例として覚えておく必要がある。但し、広則銘の作品については調査不足を否定しない。
○脇指の茎棟 忠国の各代(上段)
47 初代 慶安頃(一六四八~五二) 角
48 二代 延宝頃(一六七三~八一) 中丸
49 三代 元禄末頃(一七〇〇~〇四) 角
50 四代 享保後期頃(一七二五~三六) 小肉
○脇指の茎棟 初代忠国(下段)
51 寛永前期頃(一六二九~三三) 小肉
52 寛永後期頃(一六三八~四四) 角
53 明暦頃(一六五五~五八) 角
54 寛文後期頃 (一六六七~七一) 角
55 延宝初め頃(一六七三~七六) 小肉
(50 佐賀県鹿島市祐徳稲荷神社蔵)
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