8.1 真の例外

これまで筆者が経眼した肥前刀の中に、太刀銘に切って角様の仕立てでありながら、正真と認められる作が二口ある。下図で表示の如く、初代忠国と二代行広がそれであるが、何故そうなっているのかは不明。例外中の例外とするしかなく、数千本に一本あるかないかであろう。 以後は、他に太刀銘、角棟の正真作は経眼しないかも知れない。

二口の二代正広は、何かの事情により特別に刀銘に切ることを注文されたものと思う。この工の最晩年銘で、物に疑う余地はない。これも例外ということになる。

但し、82の資料に関しては、知人に頂戴した押形ゆえ、茎棟の確認は出来ていないが、肉のある茎棟でないと理屈に合わない。この二口は、その銘振りから同時に作られた可能性もあり、81が小肉棟であるので、82小肉棟の仕立てになっているものと確信する。

79 刀 初代忠国 寛文前期頃(一六六一~六七) 刃長二尺一寸二分(64.2cm) 太刀銘 茎棟角
80 刀 二代行広 元禄前期頃(一六八八~九二) 刃長二尺一寸(63.6cm) 太刀銘 茎棟角
81 刀 二代正広 元禄中期頃(一六九四~九八) 刃長二尺五寸一分(76.1cm) 刀銘 茎棟小肉
82 刀 二代正広 元禄中期頃(一六九四~九八) 刃長二尺三寸六分(71.5cm) 刀銘 未確認

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